映画【海よりもまだ深く】ネタバレあらすじ・感想

映画【海よりもまだ深く】情報・キャスト

公開日： 2016年
監督：是枝裕和
1時間 57分
主演俳優・女優
阿部寛
注目の俳優・女優キャスト
真木よう子、小林聡美、リリー・フランキー、池松壮亮、吉澤太陽、橋爪功、樹木希林

子供の頃から文才に恵まれていた篠田良多：阿部寛は、デビュー作の「無人の食卓」で第8回島尾敏雄賞に輝きました。

新進気鋭の小説家として文壇の注目を集めていきますが、その後の15年間は鳴かず飛ばずです。

近頃では出版社の担当編集者からマンガの原作執筆の仕事を依頼されてしまう落ちぶれようで、プライドだけは人一倍高い良多は引き受けることが出来ません。

生活費を稼ぐために山辺興信所という探偵事務所に務めていましたが、周りの人たちには執筆活動の取材と言い訳をしています。

白石響子（良多の元妻）：真木よう子との間には息子の真悟を授かりましたが、間もなく結婚生活は破綻してしまいました。

電気・ガス・水道等の公共料金の支払いもままならないほどの逼迫ぶりで、養育費も滞りがちです。

別れた妻と子供への未練はたらたらで密かに尾行や身辺調査を続けている良多は、不動産会社で働いている響子に新しい恋人が出来た事をしって俄かにショックを受けてしまいました。

ある時に団地で悠々自適な独り暮らしを送っている母親の淑子の元に、良多・響子・白石真悟（良多の息子）：吉澤太陽の3人が久しぶりに集まります。

台風が接近して帰れなくなってしまい泊まっていくことになった良多たちは、一夜限定で家族の絆を取り戻していくのでした。

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主人公の篠田良多の哀愁漂う後ろ姿を、阿部寛が情緒豊かに表現していました。

口先ばっかり達者で、まるっきり行動力が伴わない不甲斐なさがユーモアたっぷりです。

葉山奨之が扮している男子高校生に、「あんたみたいな大人になりたくない」と言われてしまうシーンが印象的でした。

若い頃は誰しもが大きな夢を抱きながらも、やがては現実と折り合いを付けていくほろ苦さが伝わってきます。

嵐の夜を団地の一室で一緒に過ごすことになった、元夫婦のぎこちないやり取りや微妙な距離感が微笑ましく映りました。

シングルマザーとひとりの女性との間で揺れ動く、響子を演じている真木よう子の立ち振る舞いが何とも色っぽいです。

巨大なタコの形をした滑り台の下で、親子水入らずで過ごす場面にはホロリとさせられました。

次の日の朝の雲一つない、台風一過の青空が美しさ溢れています。

金遣いが荒くて家族を顧みることなくこの世を去っていった父親を、憎み続けている良多の葛藤には胸が痛みました。

嫌いだった父と同じ道のりを辿っていく、良多の生きざまが皮肉です。

クライマックスの舞台となる骨董屋さんで明かされる、亡き父の意外なエピソードと知られざる素顔には心を揺さぶられました。

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2008年に劇場公開された「歩いても　歩いても」と2012年に放送された「ゴーイング　マイ　ホーム」でも、是枝裕和監督と阿部寛はタッグを組んでいます。

本作品と同じくこの2本は、主人公の名前が「良多」になっているので見比べてみると面白いです。